"BORN AGAIN" (BLACK SABBATH)

b0002910_10104496.jpgVarious Review vol. 25
「悪魔の落とし子」 ブラック・サバス
"BORN AGAIN" BLACK SABBATH

1983年発表作品
GIMCASTLE
いつも「名盤」に類する音盤を中心にご紹介しているので、今回はやや「迷盤」の香り漂う作品をご紹介したい。
"HEAVEN AND HELL"('80)、"MOB RULES"('81)、"LIVE EVIL"('82) と快作を連発していた第2期ブラック・サバスから、その快進撃の立役者となったロニー・ジェイムス・ディオ(Vo)が脱退。
オジー・オズボーンの復帰などという噂まで飛んだが、結局後任として、第2期ディープ・パープルで歴史に残る名曲の数々を歌い、その黄金期の構築に貢献したイアン・ギランが加入することが明らかになった時、世のHR/HMファンは驚愕した。
サバスパープルといえば、'70年代を通じてブリティッシュHRシーンを両輪として支えた両巨頭、いわば宿命のライヴァルであり、その片方の象徴とも言えるギランがもう片方のサバスに加入、という無節操極まりない人選には店主も正直目を疑ったものだ。
(ギランにはすでにディープ・パープル再結成話が持ち上がっていたが、結局この段階では一旦立ち消えになっている)
後のインタビュー記事などを読むと「ギーザー(・バトラー)とビールをしこたま飲んで酔っ払った勢いで(加入を)決めた。」だの「(自分の加入は)サバスにとって最悪の選択だった。」だの、人間性すら疑いたくなるような無体なことを言いまくっているギランに加え、重度のアルコール依存症で"HEAVEN AND HELL TOUR"中に脱退していたオリジナル・ドラマーのビル・ワードが復帰。
トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ギランビル・ワード(Ds)(kbはおなじみジェフ・ニコルス)という不思議なラインアップはここに完成し、ブラック・サバスの歴史上最大の問題作と言われた11作目"BORN AGAIN" 「悪魔の落とし子」は'83年10月に発表された。

ツノとキバの生えた赤ん坊の絵をあしらった不気味なジャケットが印象的。
(実物は派手にカラーリングされているのでそうでもないが、「Player」誌の新譜紹介のページではじめてこのジャケットを見たときには、モノクロだったためより一層不気味だった記憶がある)
サウンド面ではロニー・ジェイムス・ディオ在籍時の叙情性を一切排除し、初期の3枚"BLACK SABATH""PARANOID""MASTER OF REALITY"や5枚目の"SABBATH BLOODY SABBATH"等、オリジナル・サバスの持っていた不気味な重苦しい雰囲気を復活させようと意図されているが、ややそれにこだわりすぎた感も否めず力が入りすぎているようにも聴こえる。
"Zero The Hero""Keep It Warm"、タイトル曲の"Born Again"のような重苦しいミドルテンポのナンバーも、"Digital Bitch"のようなスピード・ナンバーも、曲のクオリティ自体は決して低くはないが、全体を見渡してどこがいちばんの聴き所かと問われるといささか迷う。
悪くはないのだが小粒に過ぎるのだ。
ただ、試行錯誤しながら自分たちの真の魅力とはなにかを模索する、そんなトニー・アイオミとギーザー・バトラーの姿勢はうかがえてくる。
ギランの声とサバス・サウンドの融合自体は、聴いてみるとこれがなかなかよくハマッていて大健闘と言って差し支えない。
"Disturbing The Priest"の邪悪な笑い声などはとても雰囲気が出ていて、「これがサバスだ!」と言ってもそんなに異論はないのではないかと思えるくらい魅力的だ。
ただギラン自身は、ハード・ロック・ヴォーカリストとしてはそろそろ下り坂に差し掛かろうかという微妙な時期で、全編にわたって力任せにシャウトしているものの、曲によってはいっぱいいっぱいなのが分かる。
また、やはりドラマーの力量の問題でリズム面では著しく面白みに欠けてしまっているのが残念だ。
(ビル・ワードは初期のジャズ・フレイヴァー溢れるプレイなどでは魅力的なドラマーには違いないが、'80年代当時の疾走系ハード・ロック・ナンバーには最早ついていくのが精一杯という感じだ)
ヴィニー・アピスロニー・ジェイムス・ディオの奴隷なので、ロニーとともに脱退してしまったが、彼が残ってこのアルバムに参加していたらまた違った展開になったかも知れない。
御大アイオミのギターは従来の粘っこいサウンドより、後の"SEVENTH STAR"のそれに近い印象だが、唯一オープニング・ナンバーの"Trashed"では珍しいワウ・ペダルを使った絡みつくような粘着質なソロを聴かせてくれる。

オジー時代、ロニー時代、そして"TYR"を作ったトニー・マーティン時代の充実感が大きすぎるせいで、ブラック・サバスの歴史上ではどうしてもワリを食ってしまう作品だが、少なくともオジー在籍時のブラック・サバスがお好きな人なら聴いて損はない。
「ブラック・サバスとはなんぞや」という問いに対して回答になるアルバムではないが、少なくともブリティッシュHR界のベテラン連中が作った佳作としては十分に楽しめる。
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by FHIROSE2 | 2004-08-22 10:20 | Music Man's music | Trackback | Comments(2)
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Commented by popculture at 2004-08-22 15:13
これ聴いてないっす!!
ディオの時もトニーの時も聴いてるのに・・・
いつも詳しく解説してあるのでほんと勉強になります!!
Commented by FHIROSE2 at 2004-08-22 20:26
単品で鑑賞してみてください。
文中にも書きましたが、サバスの歴史の中でどうか、と考えると非常に悩みます。
しかし、ハード・ロック・アルバムとしての完成度は決して低くありません。
ま、余裕があれば、という程度でいいかと思いますが・・・。
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