玉川カルテット

Various Review vol. 51
玉川カルテット
TAMAGAWA QUARTET


b0002910_18282915.jpg玉川カルテット
左:松木ぽん太(三味線)、中上:玉川平助(リーダー)、中下:二葉しげる(ギター)、右:松浦武雄(ギター)

とある方から本店の掲示板に書き込みをいただいたので、それに対してお礼の書き込みをお返したところ、当ブログの元旦の記事に書いた「灘康次とモダンカンカン」の件に触れ、「私は『玉川カルテット派』です。(笑」とのお返しをいただいた。
なるほど、モダンカンカンについて書いたなら、やはり玉川カルテットについても書かないわけにはいかない・・・。
というわけで、今回はおぼろげな記憶を頼りに「私的『玉カル』考」をお届けしたいと思います。





「テレビ寄席」の時代

昨年は「空前のお笑いブーム」だったんだそうだ。
確かに、思い返せばどこのチャンネルでも同じような顔ぶれが集まっては、似たようなお笑い番組を作って放送していたような気がする。
さてさて、この中でいったい何組が生き残れることやら・・・。
あの'80年代の漫才ブームだって瞬く間に泡と消え、当時そのままの芸で勝負しているのはB&Bぐらいだもの・・・。

オレが子供の頃には、現在のようなお笑いのステージとは違い、寄席の生中継や、テレビを前提に作られる寄席番組(まあ、早い話が「笑点」みたいな番組)が数多く存在した。

b0002910_1815316.jpgその中でも代表的なものがNET(現テレビ朝日)制作の「大正テレビ寄席」(昭和38~53年 日曜12:00~ 司会は牧伸二)で、この番組には牧のほか、伊藤一葉(故人)、堺すすむ、桜井長一郎(故人)、佐々木つとむ(故人)、松鶴家千とせ、ゼンジー北京、東京コミックショー、殿様キングス、早野凡平(故人)、バラクーダ、ブラックジャック、宮尾たかし・・・、といったひとくせもふたくせもある芸人達がセミ・レギュラーのような形で入れ替わり立ち替わり出演していた。
玉川カルテットもこの番組に何回も出演しており、オレの記憶ではこの番組で彼らの存在を知ったような気がする。
おそろいの着流しに身を包んだ粋な出で立ち。
思わず体を一緒に揺らしたくなるノリの良いレパートリー。
現在では数少なくなったいわゆる「ボーイズ」ものの草分けとして、灘康次とモダンカンカン東京ボーイズらと肩を並べる大御所である。
(ちなみに日テレで放送されていた「やじうま寄席」(司会は桂小益=現桂文楽)でレギュラーを張っていたのがモダンカンカンだ。)


「玉カル」の結成まで

b0002910_18153572.jpg先代リーダー玉川ゆたか率いる若き日の玉川カルテット
左から松浦、松木、玉川ゆたか、二葉。

ニ代目玉川勝太郎門下の玉川ゆたかが'60年代初頭に夫人と結成した「玉川兄弟」がそもそものルーツ。
'62年(昭和37年)に伊丹明が加入して「玉川トリオ」となり、その後松木ぽん太が加入し伊丹が退団。
'65年(昭和40年)に二葉しげるが加入し、この時から「玉川カルテット」を名乗る。
同年「あきれたトリオ」(のちに「あきれたダンディーズ」)から松浦武夫が加入すると同時にゆたか夫人が退団。
この4人が、'96年まで玉川カルテットの不動のメンバーとして活躍することになる。
玉川以外のメンバーも、松木ぽん太は浪曲師の天津羽衣、二葉しげるは二葉百合子天中軒雲月など、浪曲界の名師たちに師事した本格派。
「歌謡浪曲」と名づけた芸風を引っさげ、浪曲のみならず民謡、演歌など幅広いジャンルの音楽を次々と採り入れ、それにテンポの速いお笑いを絡めて行く独自のスタイルを築き上げた。

参考資料 geinin.jpほか


ネタ

①オープニングテーマ
「♪毎度皆様おなじみの・・・」ではじまり、松浦の渋い演歌を聴かせてからネタに突入。
②玉川と松木(たいがい女役)の短いネタがあって、たいていここで松木は玉川に引っぱたかれる
③何の脈絡もなく二葉のギターのメロディが流れ、「♪金もいらなきゃ女もいらぬぅ~(メンバー全員「イヨッ!」)、あたしゃも少し背が欲しい~・・・。」で玉川が二葉の頭をペチン!
④メインは「アンアン小唄」(98年に大滝詠一プロデュースのもと、22年ぶりのシングルとしてリリース。現在は廃盤)。
再び松浦の渋い歌を披露。
松浦が「♪ひ~と~り~、アンアーアー」と歌うと、すぐ後ろで玉川が目いっぱい大きな口をあけて「♪アーアーアー!」(松浦の口がバカでかいのをからかっている)。
次に二葉が引き受けて
「♪アンアーアーア、アンアーアー、アーーーーーーーーーウゥーーーーー・・・
見事なファルセットにひっくり返すと客席からやんやの喝采。
二葉、突如歌を中断して客席に照れながらお辞儀
ふたたび「♪ウゥーーーーー・・・」
客席ドッ。
⑤エンディングテーマ
「♪ちょうど時間となりました~、歌謡浪曲カルテット、またの会う日を楽しみに、それではみなさん、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ、さーよおーなーらー・・・」
(「サヨナラ、サヨナラ・・・」の部分は、小松政夫も十八番としていた、映画評論家故淀川長治のモノマネ)

b0002910_18412412.jpgこれが彼らが一貫してステージ披露してきたネタである。
「定番」、「偉大なるワン・パターン」・・・。
「水戸黄門」がいつまでもお茶の間に支持され続ける理由がなんとなく分かる、この「変わらないことへの安心感」。
年を取って来ると、こういう安心感がなんとも心地よいのだ。


サウンド分析

玉カルの楽器編成はツイン・ギター+三味線という至ってシンプルなもの。
ベースや打楽器はなし。
ツイン・ギターの役割分担については、松浦(芸歴50年!)リズム・ギタリストとしてカッティングでグルーヴを作り、二葉はジミヘンよろしくベース音、メロディを自在に繰り出しながらネタを飛ばす。
打楽器のない彼らのステージで、テンポを乱さずネタを繰り出すことができるのは、この松浦の力量によるところが大きい。
2ちゃんねるのギタリストに関するスレで「灘康次(モダンカンカン)のカッティングはタダものではない」という書き込みを見たことがあるが同感である。
「ボーイズもの」というのは、演奏がだらしないと単なる「おちゃらけ」にしかならないわけで、そこらのロック・バンドよりもずっと確かな演奏力を求められる。
優れたリズム・ギタリストのいるバンドが優秀であるのは、ブライアン・ジョーンズ存命時のストーンズや、ポール・スタンレーを擁するKISSルドルフ・シェンカー率いるスコーピオンズの例を出すまでもない。
洒落たジャズ・フレイバーをサウンドの軸に据えたモダンカンカンでは、島影正人のアルトサックスが曲のそこかしこで重要な色付けに使われているが(必殺技は股の間からサックスを出しての蒸気船のマネ!)、玉カルの場合にはなにせ「歌謡浪曲」であるからして、そこのところは三味線の名手松木ぽん太が一手に引き受ける。
東京ボーイズ横山ホット・ブラザース、(女性だから「ボーイズ」ではないが)ちゃっきり娘などが導入しているアコーディオンを使わなかったのは、彼らのスピーディなステージングに重たいアコーディオンは不向きだったからであろうか。
いや、ただ単に都合よくアコーディオン奏者がいなかっただけか・・・。


玉川ゆたかの死から新生玉カルへ

ワン・パターンの芸風ながらもずっと安定した人気を維持してきた玉カルだが、悲劇は突然やって来た。

b0002910_18445787.jpg'96年、リーダーの玉川ゆたかが肝臓癌で死去。
玉カルはグループ解散の危機に見舞われた。
しかし玉カルは、運転手兼マネージャーだった玉川平助(姉は浪曲師の吉野静)を新たにリーダーとして迎えグループを続けていくことを決意した。
グループ存続が決まった時、もともとは自分達より下の立場でしかも年下の平助を、メンバー全員が実に温かい言葉で迎え入れるコメントが出されていた記憶がある。
やはり、メンバー全員がこのグループを愛し、このグループで仕事をすることを心から望んでいたのであろう。
容赦ないツッコミで厳しいリーダーのイメージが強かった先代に比べ、平助はツッコミながらも田舎臭いその風貌と、どこか憎めない朴訥とした雰囲気が逆に笑いを誘う。
付き人やマネージャーがいきなりリーダーになるというのは今では考えにくいことだが、昔の芸能界ではよくあったことで、有名なところではブルー・コメッツのリーダー、ジャッキー吉川も元をただせばブレイク前のブルー・コメッツのバンド・ボーイをやっていたのだ。
b0002910_18454059.jpgこうして存続が決まった玉カル。
かつてのようなテレビ出演の機会はだいぶ減ったようで、ブラウン管(そういえば、最近は液晶テレビが普及してるからこの表現ももう古いのね(T_T))ではあまり見かけなくなった。
しかしウェブを泳いで調べてみると、そこかしこで頻繁に営業をやっているようで、あいかわらずの人気を博しているようだ。
実はオレはまだ、ナマで玉カルのステージを観るチャンスに恵まれたことがない。

2005年の目標
なんとかして、いちど玉川カルテットの舞台をナマで観る。


(文中敬称略)
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by FHIROSE2 | 2005-01-03 18:47


1960年代半ばよりちょっと後の生まれ。50ウン年間に溜めこんだ「なにか」を吐きだす場。


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